未払い養育費の差押えについて

未払い養育費の差押えについて

未払いの多い養育費

せっかく養育費を取り決めても、すぐに支払われなくなった、というのはよく聞く話です。ある統計によれば、継続して養育費を受け取れているのは全体の2割程度にしかすぎないとのことです。

催促しても支払われないのであれば、給料差押えなどの強制執行に移るしかありません。しかし、強制執行の手続きも様々な面でハードルが高く、費用倒れになるおそれもあるため諦めてしまう方も多かったものと思われます。
これではひとり親家庭はますます経済的に困窮するばかりです。

改正民事執行法により差押えが以前より容易になりました

こういった状況を踏まえ、民事執行法が改正され、強制執行による養育費の回収が従前より容易になりました。順に解説していきたいと思います。

強制執行、つまり債務者の財産を差し押さえて未払いの養育費に充てようとする場合、相手方の財産としては、預貯金、給料、債務者名義の不動産などが考えられます。不動産については、多額の費用が掛かるため、養育費の回収のためにこれを差し押さえて換価することは現実的ではないと思われます。

そこで、ここでは預貯金および給料をメインに説明します。

預金の差押えの場合

差押えを行う場合、原則として、債権者(養育費の支払いを受ける側)が、債務者(養育費の支払い義務者)の財産を特定して、申立てをする必要があります。

まず預金を差し押さえる場合であれば、債権者が債務者名義の口座がどこにあるかを特定しなければならないのです。ここでネックになるのが、銀行名だけではなく、その「支店まで」特定する必要があるということです。銀行に問い合わせても、通常はどこの支店に口座があるかは教えてくれません(※注)。ですので、いちかばちかあたりを付けて、口座がありそうな支店に差押え手続きをするのですが、口座がなければ差押えは空振りで終わってしまっていました。

※注 一部の都市銀行や地銀では支店の検索をしてくれる場合があります。またゆうちょ銀行は少し異なります。

しかし、民事執行法の改正により、養育費などの扶養義務に基づく定期金債権の場合は、銀行の本店に問い合わせれば、どの支店に債務者の口座があるかを検索し、債権者に開示するという制度ができました(第三者からの情報取得手続といいます)。これは従来からすると債権者にとってはとても良いことです。

もっとも、債務者は一度差し押さえられた口座には二度とお金を入れないと考えられるため、当該口座の差押えは事実上1回限りであり、その後の不払いについては回収できない可能性が高いという懸念があります。

給料の差押えの場合

そこで、もっとも実効性が高いと考えられるのが給料の差押えです。

給料は債務者にとっても生活費となるものですので、通常の差押えでは、給料(税引き後)の4分の1までしか差し押さえることができません。

しかし、養育費の未払いによる差押えの場合は、給料(税引き後)の2分の1までと差押えの範囲が広げられました。未払いの額に達するまで、毎月2分の1の給料の差押えが続くということになります。

さらに、将来分の養育費の差押えについても、未払い分の差押えを申し立てる際に併せて申し立てることができるようになりました。つまり、一度でも養育費の未払いを起こせば、将来分も合わせて差押えされるおそれがあるということで、債権者にもプレッシャーになるでしょう。

また、養育費の不払いは離婚後のことですので、そもそも債務者の勤務先が分からないという場合も多々あるかと思います。

この場合であっても、債権者からの申立てで、裁判所から市町村や年金事務所に照会して、住民税の源泉徴収をしている会社の名称や、厚生年金を納付している会社の名称を、書面で回答させられるようになりました。

まとめ

このように、預金についても給料についても、未払いの養育費を取り立てることが従前に比べてかなりやりやすくなりました。

もっとも、自営業であるとか、職を転々としている、給料を差し押さえたら会社を退職されてしまいそう、など、事実上のハードルは多いでしょう。債務者の性格なども考慮したうえで、それぞれの事情に合わせて最適な差押え手続きを取ることが肝要です。

今回の記事は、説明を簡略化するため、細かい例外などは省いています。

養育費の未払いのため差押えをしたいが、ご自分がどのような方法をとるのがベターかわからない、手続きについて詳しく教えてほしいなどの場合は、ぜひお早めにご相談ください。

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